2006/04/15  Yo&U

昼、旅行用の衣類を買いに神保町へ。チベットは、陽射しのつよい乾燥した高地。陽射しの有無や朝晩で寒暖の差が大きくなりがちなので、薄めの化繊シャツやフリースを何枚も重ね着して対応できるよう、多めに準備してください、と言われている。最初は冬物のセール品を漁っていたが、試着しているうちに気に入った色の物が欲しくなり、結局自分はmont bellの回し者かと思うほどmont bellで揃えてしまった。

午後、般若心経の写経。

夜、一青窈コンサート「Yo & U」@東京国際フォーラム。
家族の事情でシドニー・東京間を往復していた時期が一段落し、東京に戻ってきたある日、テレビで彼女が「ハナミズキ」を歌っているのを見て驚愕した時のことを、よく覚えている。久しぶりに日本の歌番組を見たら、すごい詩人がいる……! と感動したのだった。
すごい詩人だと思う。詩の原点としての言葉遊び、が生きている。彼女がたとえば、「茶化す、茶化す」と繰り返しささやくたびに、マラカスがシャン、シャンと鳴っているように聞こえてくる。考えてみるまでもなく、言葉遊びを人に聞かせるとしたら、曲にのせるほどいい方法はない。ミューズの書いた詞/詩を読んで、曲をつけたい男性が集まる。けれども、たとえば「」における井上揚水は、完全に一青窈の詞に負けてしまっているんじゃないか、という気がする。だからあのような、語り/騙りを乗せられるリズムの旋律を編み出せずに、BGM的な構成になったのではないか。

彼女はゴスロリ風なフリルたっぷりの、真っ白に膨らんだショートスカート・ドレスで現れた。ひざ上あたりからきれいな脚を露わにしたまま、ステージの上を踊り、跳ねる。膝頭の骨が長くて、目に焼き付く。舞台装置として据えられた8枚ほどの縦長の白いパネルの上で照明がさまざまに変化し、白いドレスの彼女を幾通りもの色に染める。アップテンポの元気よい曲、パパのかわいい娘を演じる曲、しっとりした曲、こぶしのきいた曲……。

隣に坐っていたおじさん、開演直前まで写真週刊誌を舐めるように読んでいた。このコンサートには一人で来ていた様子で、彼女が舞台に登場してからはずーっと、双眼鏡を覗きっぱなし。ときどき双眼鏡を膝元に置いては、そっと身悶えするように、ため息をついていた。
……気持ち、わかります。ものすごくチャーミングな歌姫だもの。

一番よかったのは、やはり「ハナミズキ」だったように感じた。この詞は深い。「僕の我慢が」とか「君と君の好きな人が、百年続きますように」とか、用語の表面だけを掬うと、「好きな女性をライバルに譲った男性のモノローグ」といった設定にみえる(し、そのように読まれてもかまわない、と一青窈は思っているかもしれない)が、実際はもっと深いところからうたっている、と思う。初めて聞いた時に不思議な詩だと感じ、後ほどCDの解説に「9・11の後に作った」とあるのを読んで、なるほどと腑に落ちたのだった。
崩壊直前の高い塔の中で、お先に行きなさい、と他者をいざなった無名の人々や、無名の救援者たち。彼らのような人々は、あの「9・11」のみならず、これまで地上で起きてきた無数の「9・11」において、数多く存在していたはずだ。あの詞はそのような、世界のどこにも報道されず、誰にも気づかれなかった無数の人々に向けられているように感じられる。だからこそ不可思議な尊さを湛えて、聞く者の心を揺さぶるのではないか。
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by epea | 2006-04-16 01:32 | 日常雑記
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