2008/11/6(木) ダライ・ラマ法王 東京講演の概要(1)

昨日福岡から戻ってきたのですが、どこかで風邪を拾ったようです、不覚にも。
今日は朦朧としていたので、法王様の英語に意識を集中しました(本日は終始、英語でお話しになりました)。よって以下のごく大雑把なメモは、マリアさんの丁寧な日本語訳とは多少、離れているかもしれません。ご了承ください。


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ダライ・ラマ法王来日講演 
「心の本質は光 ~ よみがえれ美しき日本の心 めざそう世界貢献」
主催: 時輪塾

【全体の流れ】
  開会
1. 司会者挨拶
2. 法王入場、メディアによる photo op.
3. 法王講演
4. 質疑応答
5. 主催者 会計報告
6. 法王への花束贈呈
7. 法王よりカタ返礼
  閉会

【法王 講演内容】
・(ナーガルジュナの中論・最後の帰敬偈、正しい教えを説く仏陀への礼拝)

・私たち個人個人は誰もが、幸せを築くための大きな潜在力を持っている。
家族の幸せはコミュニティの幸せにつながり、ひいては世界の幸せにつながっていく。
つまり、人類全体の人間性(humanity)は、個人個人の貢献から成っている。
すべての変化は個人レベルから始まっていくものだ。

・そうした観点からも、私の考えをこの場で、大勢の個々人たる皆様と分かち合えるのは嬉しい。
(主催者への謝辞)

■盲信せず、己自身で検証せよ
・私は特別な人間ではない。ナーランダ僧院の伝統を引き継ぐ、ただの一僧侶にすぎない。
私に、超能力や奇跡の類いを期待するのはナンセンス。
また、いわゆる「ヒーリング」にも懐疑的だ。
ヒーリングを標榜するような人は、むしろ危険と思うこと。心の弱みにつけこまれないように。
(「ヒーリング・パワーがあったら胆石手術なんかせずに自分で治してるよ、ワッハッハ」)

・仏教徒としてできることは、
調査・研究(investigation) および
論理に基づく推論(reasoning)  による、事実の追求である。
したがって、むしろ科学に近い、といえる。

・釈尊の弟子への言葉: 
「仏教徒には、自らの力で調査・研究する自由がある(liberty to investigate)」

皆さんも、私の言うことを盲信しないで欲しい。
私の発言を、自分自身で精査して、検証して欲しい。
なぜなら、私もまた単なる僧侶であり、ナーガルジュナの弟子に過ぎないのだから。

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以下、二つのセクションに分けて話す。
1. 人間の心や精神の作用について (世俗の観点から)
2. 人間の心の本質について (仏教の観点から)
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1. 心の作用/感情 について 

・あらゆる生物は、肉体と心の二つのレベルにおいて、幸せを求めている。

・人間に関していえば、今世紀において、物質面では一定のレベルに達している、といえる。
だが依然として、著しい貧富の差が(社会の中であれ、国家間であれ)存在する。
自由世界においては法律によって機会の平等が保証されている、という建前はあるものの、
実態として、貧しい人々は弱い立場に立たされて、機会を逸し続けている。

例) 法王が福岡で会った、バングラデシュからの女生徒の話
「日本では、毎日、朝が来て、幸せに暮らすことが当たり前のことと受け止められている。
バングラデシュでは、そうではない。4歳の少女が物乞いをしている姿を見て、悲しくなった」

ところが、「今日と同じく無事に明日の朝が迎えられる」のが当然となっているはずの日本で、
多くの人々(特に若者)が、ストレスや鬱など、精神的な不幸に見舞われている
→ 精神の幸福は、物質の発展のみでは得られないことの証拠。


■精神レベルの困難は、物質レベルでは解決できない。
精神状態は、物質的な構成要素から成り立っているわけではないのだから。

例) 花の色を変えるには?
花の構成要素の中でも、色を支配する要素(化学組成etc)が変わらなければ、花の色も変わらない。物質レベルの変化は、物質を構成する微粒子レベルの変化によってもたらされる。

・同様に、精神レベルの問題を変えるには、精神レベル内の要素を変えなければならない。

-怒り・憎しみを取りのぞくには? 自分の中に、その対象への思いやり・親切心をはぐくむしかない。(瞑想するだけでは不十分)
-恐れを取りのぞくには? 自分の中に、その対象への信頼を築くしかない。
そのためには、恐れの原因を調査し、それが恐れるに足らないとわかれば、あるいは対処法がわかれば、恐れを取り除くことができる。

⇒ したがって、精神レベルにおいてどのような要素が有益か、吟味する必要がある。


■感情の影響
・精神における要素(感情の種類)

-有益な感情(helpful emotion): 慈愛、静寂
-有害な感情(harmful emotion): 怒り、憎しみ、嫉妬、恐れ

現代西洋医学においても、思いやりや心の平穏が免疫力の向上をもたらし、恒常的に怒りや憎しみを感じつづけていると免疫力がダウンする、といった結果が報告されている(米科学者の研究)。
→ 感情は、肉体と精神の両レベルにおいて影響が大きい。

-好ましい感情(favorable emotion): 好ましいものをひきつける
   生きていくうえで助けになるものを自分に引き寄せようとして、生じる
-好ましくない感情(unfavorable emotion): 好ましくないものをひきはなす
   生きていくうえで害をなすものを自分からとり除こうとして、生じる

どちらの感情も、生物学的な要請により人間に備わっている。
怒りによって、自分に害をなすものを遠ざけるのは、生きていくうえである程度は必要。
だが、極端な感情は、それ自体が害悪となる。

例) 敵とは: 特定の対象が、永遠に敵であり続けることはない。
輪廻転生の観点からすれば、今生の敵が来世以降もずっと敵であり続けるわけではない。
また、今生においても、条件・環境が変われば、明日にでも敵ではなくなるかもしれない。
→ もはや敵ではないかもしれない対象に、敵意を抱きつづけることは、かえって自分に害をなす。健康を害し、物事を正しく見ることを阻むから。

例) 法王がストックホルムで会った、米科学者の話
「怒りや憎しみに満ちた人々は、対象を100%ネガティブなものとして捉えてしまう。だがそのうち90%のネガティブな感情は、その人の心の投影(mental projection)に過ぎない」
→ 仏教経典でも、同じように説く一節がある。
「破壊的な感情に支配されると、現実を正しく見る能力が阻まれる」

誰もがトラブルを求めていないのにトラブルが発生するのは、感情に支配されることによって、現実を適切に見ることができず、問題への対処法が非現実的になっているから。

⇒ 感情の危険性: 感情は限度を超えると害をなすことを、しっかり認識しておくように。


(続く)
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by epea | 2008-11-06 22:22 | 仏教関連
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