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ジャムヤン・ノルブ氏のランゼン(独立)エッセイ

特別全体会議の開催を契機に、ランゼン(独立)派の論客の論説が相次いでPhayulに掲載されています。

その代表格が、チベットNOW@ルンタでも度々紹介されているジャムヤン・ノルブ氏
ノルブ氏の流麗な長文エッセイは、春先から9月頃まで毎週のようにPhayulで掲載されていましたが、中道路線の停滞に業を煮やしたのかネタが尽きたのか(?)、10月に入って一ヶ月あまり、新しい文章の更新がなかったようです。

(実際、すでに5月ごろに
「交渉には何の進展もなく毎年同じパターンの繰り返しで、まるで出口のない悪夢、気がつけば自分も前に書いたものとそっくり同じ文章を書いてる、もうとっくにネタは尽きてる、云々」
といった、ボヤキにも似た告白を長々と書いていらっしゃいました。)

ところが今月に入って、ご自身のブログ"Shadow Tibet"にて、新たな論説を精力的に発表しておられます。

最新の文章、"Middle Way Metamorphosis"においては、中道路線維持派に対する論駁がわかりやすく列挙されていたので、以下に抜粋してみました。

(注)まともな翻訳ではありません。
というより、抜粋しているうちにだんだん、「ジャムヤンさん、本音としてはぶっちゃけトークで、こんな風に言いたいのでは?」と思えてきて、かるいノリで書いてしまった。
例によっていい加減な「超訳」です、まゆに唾つけて読んでください。

ジャムヤン氏による元の英文は、きわめて上品かつ緻密に組み立てられています。

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"Middle Way Metamorphosis" by Jamyang Norbu
『中道路線の変貌』

(ジャムヤン氏はこの論説の前半部分で、先の対談に関して、
記者会見における中国側代表の侮蔑的で空疎な態度をYoutube画像へのリンクを添えて
示しつつ、「中道路線に基づく『実質的な自治』を求める交渉は完全に失敗に終わった」と述べています。)

■中道路線推進派は、(中国によって対話交渉の終結が宣言されたに等しい現在にあっても)次の理由から中道路線を堅持するべきである、としているようだ。

1) インドを含む世界各国が、「独立」ではなく「中道路線」を支持している
2) もし我々(チベット人)が「中道路線」をあきらめて「独立」を目的に掲げたら、インド政府は我々の滞在を許さず、チベット人はインドから追放されるだろう

■だが、上記の意見は間違っている。以下、反論。

1) 世界各国は別に、「ウ・ツァン、アムド、カムの三地域からなるチベット統合および、中国内におけるその実質的な自治の確立」を支持しているわけではないでしょう。
単に、「交渉」の継続を支持して、中国指導部にダライ・ラマと対話するようにと、あくまで「促している」だけ。
はっきり言って、国際社会/国内世論に対するポーズだけ。
本気でチベットを支援して、中国市場を失うような真似はしないでしょう。

こういう各国リーダーの態度はチベットの件に限らず、世界中のあらゆる紛争に関していつもとっている、お決まりのポーズ。チベットだけが特別扱いされているわけじゃない。

2) 「独立を掲げたらインドから追放される」という考え方は、見当違いも甚だしい。
こんなことを言うこと自体、インド政府・国民に対して、失礼。亡命政府はこんな迷信じみた誤った考えを、一般チベット人の間に流布するべきでない。

だいたい、インドは現在、アルナチャル・プラデシュ州の帰属をめぐって、中国政府とバトルを繰り広げている 第12回会談を開催している最中。で、その会談の停滞ぶりといったら、われらがチベット・中国交渉と、いい勝負。

中国はアッサム州のテロリストに武器を融通しているらしいし、ネパール政府は今や毛沢東派にのっとられているし、インド国内の毛派も過激さを増しつつ急進中だし、中国海軍はインド洋上に展開しているし…… こんな状況だから、インド政界の中ではむしろ、チベットが中国から「独立宣言するだけじゃなく、何かもっとやってくれぃ」という期待の声が多いんじゃない?

***(以下、11/20に追記)***

■チベットでの一連の騒乱やチベット人による帰還マーチ、デリーでの大規模デモの発生などを受けて、インドのマンモハン・シン首相は、ダライ・ラマ法王を 「生きている人々の中で、最も偉大なガンジー主義体現者(the greatest living Gandhian)」と賞賛。
また、「インドは民主主義国家であり、インドにいるチベット人亡命者には政治的自由が保証されている」との声明を発表している。

■そもそも、中道路線では
「交渉」と「自治」の二つの要素に重点を置きすぎているのが、問題ではないか。

■元来、ダライ・ラマ法王は「非暴力主義」によって自由を獲得しようという一貫した姿勢によって、国際的に高い評価を受けてきた。
それは、ノーベル平和賞受賞理由にも明記されている通り。

■【ジャムヤン氏の提案】
「非暴力主義」を基本に据えたまま、ゴールを「自治」ではなく、「独立」へと変えればよいのではないか。
中道路線をこのように変更したところで、法王が国際的な評価を損なうことなどありえない。
元祖・非暴力主義のガンジーも、「(イギリスからの)独立」をゴールに闘ったのであり、
「(イギリス支配下の)自治」といった、中途半端な目標を掲げたのではなかった。

■とはいえ、実際にこの方針を、いかに具体的な行動計画に落とし込むか?が微妙なところ。
これについては特別会議で議論したいし、このサイトでも公表していく予定だから、これからも見守っていて欲しい。


(以上)
by epea | 2008-11-19 00:18 | Jamyang Norbu
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