西蔵ツワン氏、レセプション

金曜夜に依頼されていたことについて、パフォーマンスは自分自身でまったく納得のいかないものとなり、反省している(というほど大仰な役割でもなかったけれど)。直前にいただいた情報を自分の原稿と統合させようと努力したが、不自然な文章になってしまい、淀みなく、というわけにはいかなかった。夕方に職場から直行したので、気持ちもざわついていた。

昨年から見ていてくれたある人が、「いっそ副業にすれば?」とのたまう。結婚式などの司会の相場は、一件あたり2万円程度らしい。事前の打合せに必要な時間もあるし、人様の一生に一度の晴れの舞台で失敗は禁物というプレッシャーはあるものの、週末の半日を費やすアルバイトとしては悪くない。毎週そうして稼いだ分を、自分が心からサポートしたいと思っているNPOに定期的にまわせたら素敵じゃない?! などと野心がいっしゅん頭をもたげ調べてみたところ、現実はそう甘くはなさそうで、実現性のあまりの低さに早々と却下する。

帰り道、西蔵ツワンさんと歩きながら、途中までご一緒させていただく。

ツワンさんは、1960年代、亡命政府より日本に初めて本格的に派遣されたスーパーエリート・選りすぐりのチベット青年団5名の中のお一人。10代前半で日本に降り立ち、そのまま日本で教育を受けて医大を卒業。埼玉医科大学勤務を経て、現在は武蔵台病院院長(下のリンク先記事などで「副院長」となっていますが、現在は院長になられています)。

「『12,3 才で日本に来て、一人でさぞ苦労されたでしょう』とよく言われるのですが、自分自身で振り返ってみて、日本に来てから苦しかったという記憶は全然ないのです。私の引き取られた先は埼玉県の秩父で、当時は本当に何もない田舎でした。親がなくても、街全体が自分を育ててくれたように感じています。昭和40年代で、昔ながらの日本のコミュニティが残っていたのも、よかったのかもしれません」

「また、60年代はまだ希望に満ちた時代で、『さあ、これからチベット人は世界に羽ばたいていくぞ』ということで、私たち5人は亡命政府より希望を託されて、日本にやってきました。アメリカやヨーロッパに派遣されたグループもありました。チベットの人々は希望に満ちた将来を思い描いていて、意欲にあふれていました。そういう時代背景の影響もあったと思います」

(G20でサルコジ大統領が「チベットは中国の一部」と発言したとされる報道について)
「それは、国際社会の中の立場によるものだと思います。フランスという国家の指導者としてはやむをえないものと理解していますし、特にどうということも感じません」

(2月に設立されたチベット・中国友好協会で、会長に就任された件について)
「今のチベットの状況は、中国の一般の人々にわかっていただかなければ、どうにもならないと考えます。この50年間、チベット難民だけでなく中国の人々も大勢が亡くなっています。私は、中国の人々もまた、被害者だと思っています。100%チベットが正しい、と言うつもりもありません、チベットにも問題はあるのです。チベット問題を解決するには、中国政府に迫害されている周辺の他の民族の人々と協力し合っていくことが必要でしょうし、何よりも中国の『民』の力が必要です。中国の人々と協力していきたいと願っています」

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ツワンさんの生い立ちについては、こちら。いいインタビューですので、ぜひご覧ください。
『風の馬』チベット・コラム 第1回: チベット人の魂は抑圧できない

「……映画の登場人物の中で、個人的には中国指導部に一番同情しました。彼らは今起きている事に気づいてない。いずれ全てを精算する時がやってきます。今の状況では、チベット人にとって失うものはもう何も無く、闘うしかありません。闘うという事は決して暴力ではなく、仏教の慈悲の心を持ちひたすら耐える事です。チベット仏教の哲学は耐える事、憐れむ事、それが根底です。時間はかかるかもしれませんが、いつか中国が民主化し、今まで行った事が全て浮き上がれば、今度は彼らが裁判にかけられます。その事実を今の中国指導部は知っておかなければいけません。……」

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お話を伺いながら、お写真と一緒にブログに掲載してもいいですか? とお許しをいただいていたのに、最後は慌しくなってしまい、撮らせていただくのを忘れてしまった。実際にお目にかかった雰囲気は、こちらのポートレートに近い感じ。静かで落ち着いた知的な物腰、その穏やかな底に湛えられた凄みのような気配がじわっと滲み出てくる、といったような。たいへん素敵な方でした。
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by epea | 2009-04-05 01:31 | チベット・中国関連
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