『China's Train, Tibet's Tragedy』 

昨日4/6(月)にチベット亡命政府から発表されたばかりのほかほか新資料より、
一部を抄訳してお伝えします。

亡命政府からのリリースはこちら
■原本はこちら(PDF 5.7M)

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『中国の列車、チベットの悲劇 (China's Train, Tibet's Tragedy)』 

環境に与える影響 (Environmental Implications)

チベット北方高原(Northern-Tibet Plateau/NTP)は中国西方の広大な地域を占める、平均標高4500m、面積250万平方キロの広さを誇る高地。世界の屋根、地球の第三の極として知られ、古代から現代に続く氷河およびアジアを代表する大河の源でもある。この高原の大気は上昇気流に乗り、アジア全域の大気循環、地域の気候(気温、降水型、モンスーン等)に大きな影響を及ぼす。
⇒ 地球温暖化の影響は標高が高まるにつれ大きくなるのだから、チベットの高地は世界的な気候変動に対して特に被害を受けやすいといえる。

■チベット高原に棲息するユニークな動物たち
・チベットアンテロープ(チベットレイヨウ)
・ベンガルトラ
・アカパンダ
・ジャイアントパンダ
・ヒマラヤタール
・ツキノワグマ
・ヒグマ
・ユキヒョウ
・クロクビ鶴
・バーラル(ヒマラヤンブルーシープ)
・チベットガゼル
・野生のヤク
など。
チベット高原は、かつて「高原のセレンゲッティ」とも呼ばれていたのに、今やいずれの動物も、頭数・種類ともに著しく減少の一途をたどっている。

・都市化やインフラ開発の進展とともにこうした野生動物の棲息を支えることのできる環境は失われてきている。
・絶滅危惧種から作られた品物が観光客向けのおみやげとして出回っており、売上げを伸ばしている。環境問題専門家グループは、こうした製品を買わないようにと旅行者に呼びかけている。

■今日、チベット域内において
絶滅に瀕している植物は、40種
絶滅に瀕している動物は、141種

■チベット高原に源流を発する代表的なアジアの河川
・黄河
・長江
・メコン川
・サルウィン川
・ヤルツァンポ川 → ブラマプトラ川 → ガンジス川

これらの河川はアジア全人口の80%(全世界人口の約半分)を潤す水源。
だが、二つの要因により乾燥化が進んでいる。
1. 気候変動
2. 中国東部における水資源需要に振り分ける計画の進行

■中国その他の環境学者の研究によると、地球温暖化がチベットの環境に重大な影響を与えていることに疑いの余地はない。
チベットでは、世界平均の2倍の速さで温暖化が進んでいる。
過去50年間において、北半球の平均よりも、また同じ緯度の他の地域よりも温暖化の規模が大きかった。
チベット高原において、1950年代から1980年代にかけて、10年毎に平均 0.1-0.3℃ で気温が上昇したことが計測されている。

■湖の表面積も減少している。
チベット高原最大の湖・ナムツォ湖では、1970年から1988年にかけて 38.58 平方キロの湖面が縮小している。
すなわち、1年あたり 2.14 平方キロ の消失。

■過去21年間、ラサの気温は一年あたり 0.00623℃上昇してきた。

■草原の減少、氷河の融解にもつながっている。
中国と米国の研究者の調査によると、地球温暖化によってチベット高原における植物種が劇的に減少しかねない。すでに、高原に豊富に存在していた種はある程度失われており、
1991年から2001年にかけて、薬草は年平均で 4.9種、食用の植物は 5.4種も失われている。

■こうした現状に対して、中国の「西部開発戦略(計画?)」に基づく開発がさらに拍車をかけている。
World Wide Fund for Nature (WWF) China によると「開発が、チベット生態系の質に影響を及ぼしている最大の要因」。
主な要因:
・チベットにおける急速な人口増加、道路建設、鉱山開発、放牧の衰退
・森林伐採、焼畑農業、建築、伝統的な農業習慣、お香の製造(古い森林の破壊につながる)
・野生動物の不法な狩猟
・野生生物の保護と畜産の対立(ヒグマや野生のヤクの減少)

■中国政府による方策
チベット高原における気候変動と環境劣化はアジアひいては世界全体に破滅的な影響をもたらすことが明らかになっているにも関わらず、中国政府による方針は環境への影響をほとんど無視した、経済偏重路線が続いている。

・中国鉄道省
「(青蔵鉄道は)周辺の生態環境に破壊的な影響をもたらすだろう」ことを認め、「悪影響を最小に抑える効果的な方策を検討している」と述べた
⇒ 中国政府は、鉄道周辺の環境保護に1億9250万ドルを投資
・野生動物が鉄道を横切って移動する時に通れるような地下道
・永久凍土の溶解を防ぐための特別冷却液
・チベットの環境を汚染しないためのゴミ処理
例)
・2007年7月2日・中華日報(China Daily)による報道
「鉄道省は、7万トン分のゴミや汚水を適切に処理」
・2006年6月17日・ウェブ版人民日報(People's Daily Online)による報道
「青海省-チベット(ゴルムド-ラサ間)を毎週、ゴミ収集のための特別列車が走り、高原の環境を保護」
「環境保護団体グリーン・リバーと鉄道建設関係者らが協力し、5年にわたる鉄道建設計画において環境面への配慮が盛り込まれるよう検討した」

だがこうした努力はあっても、鉄道建設は実際に周辺の環境に影響を与えてきている。

■チベット高原の環境をめぐる証言
・World Wide Fund for Nature (WWF) China 在ラサ・プログラムオフィス長ダワ・ツェリン氏:
「チベット高原の生態系は、きわめて脆弱。いったん破壊されたら、元に戻すのはきわめて難しい。地域開発の必要性を、チベットにおける生物種の多様性(biodiversity)の保護と統合させることが、喫緊の課題」

・チベット高原の社会経済開発に関する研究に従事してきたアムド(青海省)上級研究員 Weng Hengshen氏:
「青蔵鉄道は、開通してから後の方が環境保護に関する大きな課題を生み出す。脆弱な生態系は、回復不可能な破壊を受ける危険に直面するだろう」との懸念を表明

・四川省をベースに活動している環境保護団体グリーン・リバーの設立者・会長 Yang Xin氏:
「(同団体は鉄道建設関係者と協力してきたが)鉄道のレール敷設のための資源調達のために、草地が犠牲になっていることは否定できない。この地域の生態系・種の多様性が失われたら、それが回復される可能性は限りなく小さい。表土や草地がダメージを受けたら、その回復には100年かそれ以上かかるかもしれない」

・中国国家副首相 曾培炎(Zen Peiyan)氏
「1956km に渡る鉄道は建設よりも維持するほうが困難で骨の折れる作業となるだろう。
安全策の改善、よりよいサービス、効率的な移送、そしてよりよい環境保護政策が必要。
高原の擁する広大な地域は地球温暖化や資源開発に対してきわめて脆弱であり、鉄道のもたらす環境の変化は自然の生態系に不可逆なダメージをもたらす可能性がある」

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もしかしたら来週末に使うかもしれない資料の叩き台として、突貫工事で(笑)まとめてみました。たぶんこのままでは使わないので、ここにも載せてしまおう。

元の英文資料はタイトル『China's Train, Tibet's Tragedy』が示すとおり、青蔵鉄道がチベット高原(の主に生態系)にもたらしている影響について、非常に多くの参考資料から記述を引用しながら、わかりやすくとりまとめた環境白書となっています。

驚いたのは、高原全域で進んでいる砂漠化現象によって、青蔵鉄道を支える土壌が土から砂に変わり始めているため、すでに危ない状態に移りつつある橋脚もあるらしいとのこと。 「地球温暖化で永久凍土が緩んできて、危なくなるのでは?」と思っていたのですが、それより早く砂漠化が進行している様子です。

中国政府は、「砂をがっちり固めて橋脚を安定させ、かつ環境にもやさしいケミカルを開発した」と発表しているそうですが……本当に生態系に優しいスーパーテクノロジーであることを、切に祈ります。。
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by epea | 2009-04-08 03:50 | チベット・中国関連
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