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命の水

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毎朝、水を汲んでくれた隣家のおじいさん。この水場は近所の人々が飲料水や料理のための水を汲みにくる所で、私もここで顔を洗ったり歯を磨いたりしていた。生で飲んでも何の問題もなかった。結局、ダラムサラにいる間じゅうずっと、お腹の調子はきわめて良好だった。最初は不便に感じたが、むしろこの水場に行くことで「ご近所さん」と知り合う機会が増えたのだった。断水に遭ったおかげでチベタンの友人が出来て、世界が広がった。嬉しい「断水」だった。

とはいえ、水の不自由な街にしばらくの間住んでみて、あらためて水のありがたさを身に沁みて痛感した。水は命を繋げていくうえで必須なもの、ということは、常識として知っていたけれど、実際に水道の出ない場所で生活してみて、身を以って学んだ、という気がする。水を飲まないと生きていけないのはもちろんだが、仮に飲み水だけはボトル入りのミネラル・ウォーターが手に入るとしても、水がなければまず、トイレで排泄物を流すことができず、大いに困惑することになる。衣服はおろか、顔も体も洗えない。「生活している」といえる状態を保つことが、ほぼ不可能になる。

水は、大切なものだ。

*

医者、用水路を拓く』は感動的な著作なので、未読の方はぜひ一読されたし。著者はペシャワール会代表・中村哲医師。1984年以降、パキスタン、アフガニスタンの辺境で難民に寄り添いながら現地医療に尽くし、特に2000年にアフガニスタンを襲った大旱魃以降は、メスを重機のハンドルに握り替えて、水源確保事業、緑化事業、灌漑水利計画等を推進してきた人である。その作業地、1500ヶ所以上。年間診療数、約8万人。

本書は、ペシャワール会2001年9月から2007年4月までの活動記録となっている。中村氏に率いられた現地人および日本人ワーカーの方々が、国際政治の不条理に引き裂かれるような状況に翻弄されながらも、その時々に実践しうる最善を目指して力を尽くし、乾燥しきった大地に用水をもたらすべく灌漑施設を敷設しようと地道に奮闘し続けてきた様子が記されている。あくまでも淡々とした記述ゆえに、いっそう胸に迫る。(ダラムサラにいた時、中村氏の活動についてもOさん達との間で話題になった。)

『目覚めよ、仏教』の対談において、ダライ・ラマ法王は「(不正に対しては)慈悲をもって怒れ」と説いている。中村氏の『医者、用水路を拓く』はまさしく、「菩提心を起こした個々の人間が、(虚構にまみれた国際紛争の巨大な渦中にあって)やり場のない怒りを抱きつつも夜叉の如く、固い覚悟で利他行を続けてきた記録」といえる。

「百の診療所よりも一本の用水路」

「飢餓と渇水を前に医療人はあまりに無力で、辛い思いをする。
清涼な飲料水と十分な農業生産があれば、病の多くは防ぎ得る」

「私たちが持たなくてよいものは何か、人として最後まで失ってはならぬものは何か、
私たちのささやかな実践が、それに想いをいたす機縁となれば、苦労も報われると思っている。」

チベット仏教的には、最上の菩薩行によってよき転生を果たされるに違いないのだが、伊藤和也さんには心から敬意を表し、ご冥福をお祈りいたします。
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by epea | 2008-08-30 10:33 | インド関連

予告

更新が止まっておりまして、申し訳ありません。
ダラムサラにいる時には、「日本のじゃぶじゃぶブロードバンド環境に戻ったら、ガンガン更新するぞ~」と息巻いていたのですが。実際、公開していきたい写真はたくさんあるのです。

事情により明日からまたネットアクセスできない場所に行くことになってしまいましたが、26日に帰国してからは、更新を再開していきたいと思っています。
(Mixiのスレッドもお任せしっぱなしで大変申し訳ございません。26日夜には訪問いたします。)

どうぞよろしくお願いいたします。
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by epea | 2008-08-21 01:30 | 日常雑記

ダラムサラでは五輪への抗議集会が続く


ダラムサラでは、ちょうどデリーで無期限ハンストが開始された7月末から、そこはかとなく五輪に対する抗議ムードがかもし出されていました。

そこはかとなく……というのは、五輪を支持する法王様のスタンスに配慮して、一般人の皆さんとしては表立っては抗議アクションを強く打ち出さない姿勢を保っておられたからですが、心情としてはやはり「本土における当局の蛮行を容認しているわけではまったくない、抗議の意思表明をしたい・・・」 と感じていた人々がほとんどではないかと思います。お店や行商のおばちゃん達、ストリート・ミュージシャン、学校の先生といった人々と話をしてみて、私自身はそういう印象を受けました。

そのためか、開会式前日の7日(木)から、チベット系の商店はいっせいに閉店し、連続抗議デモの態勢に入りました。毎日、数千人の人々がツクラカンの広場に集まって集会を開き、そこからロウワーダラムサラに向けて坂道を下っていくのです。あるいは逆のコースで、山の麓の方から上のマクロードガンジまで上っていく、というパターンも。

私がダラムサラを出なければならなかったのは開会式当日である8日でしたが、この日は朝9時から集会があり、たいそうな勢いでした。ちょうど、5月6日の東京デモ最後の時の、代々木公園屋外ステージを彷彿させる盛り上がりでした。(ちなみに、3月22日の東京デモの模様はかなり海外でも放映されたようで、チベタンには何度か感謝されました。)

昨日10日の様子がパユルに出ています。
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by epea | 2008-08-11 10:30 | インド関連

帰国しました

しばらく音信不通になっていて、すみません。先週後半、完全にネットから切断された状態にありました。

夜行バスと飛行機を乗り継いで、東京に戻ってきました。戻ってきた途端、下痢になってしまいました。。

蛇口をひねれば水が出て、供給電圧も安定していて。日本は贅沢で快適ですね。

ダラムサラでは数多くの知遇を得て、それと同時に多くの宿題を戴きました。今後、それらをどうやって形にしていくか、思案のしどころです。

ウェブでの情報発信については素材をたくさん持ち帰ったので、写真やインタビューを少しずつ上げていこうと思います。

とり急ぎ、お知らせまで。
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by epea | 2008-08-10 23:38 | インド関連

2008/08/02 (土) デリーの無期限ハンガーストライキ 続報

7/28にデリーで開始された無期限ハンガーストライキの続報がPhayul に出ていますので、興味ある方はご参照ください。6日目を過ぎて、参加者の健康状態はきわめて危ぶまれている模様です。(訳している時間がなくて、すみません。)

なお、記事の最後に感想を投稿できるシステムがあります(一番下の「Reader's Comments」とある赤い欄をクリック)。こちらに英語で投稿すれば、Phayul の読者(大勢のチベット人が読んでいます)に声を届けることができると思いますので、試してみてください。

Phayul の写真コーナーはこちら

ダラムサラでは街中にポスターが貼られています。道行く人々も心配そうに足を止めて見ています。
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知人が参加している、という僧侶の方々。長い時間かけてポスターを読んでいました。
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ハンスト参加者6名の内訳は、5名が僧侶で1名が一般人。そのうち、ダラムサラ出身者は一般人を含む2名です(写真上段真ん中と下段左端)。
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by epea | 2008-08-03 10:15 | インド関連

2008/08/01 (金) ティーチングが目前に迫ったツクラカンの様子

8月4日から6日まで、法王様によるティーチングが行われます。日程が近づいてきたためか、ツクラカンの空気も徐々に変化している感じがします。
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本堂ではカメラテストが始まっていて、新しいバター彫刻も作られていたり。昨日は2人の僧侶の方々が新たに砂曼荼羅を書き始めておられる場面を目にしましたが、今日はその一隅は幕に覆われていました。
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今回のティーチングで講義されるテキストは、アティーシャ・ディパンカーラ・シュリジュニヤーナの『菩提道灯論』。チベット語では『ジャンチュプ・ラム・ギ・ドンマ(jamchup lam kyi drolma)』。ありがたくも、法王様専属日本語通訳者として名高いマリア・リンチェンさんが今回も通訳についてくださるそうです。日本語のテキストはすでに入手したので、該当箇所のチベット語の原本も見ておきたいと思い、街中の本屋さんで探しているのですが、意外と見つかりにくい。ツクラカンの中にある親切な本屋さんにいろいろと教えていただいて、英訳版は入手しました。

本堂のアティーシャ像です。
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by epea | 2008-08-01 12:21 | インド関連