そしてさっき、なつかしい夕映えの照り映える

そしてさっき、なつかしい夕映えの照り映える海辺の超近代的なビル ――「超近代」とはいつを指すのだろう、「現代」を指すわけではないし、「超現代」とも言わない、いずれにせよあれは「今」のものではない、「今」あのような建物は海辺にない、ともう一人の私は思う―― のガラスでできた外壁は、よく磨かれた鋼で作られた凹面鏡のように太陽の光を受けて輝いていて、ビルの中はまったく見えない。私はいつも遠くから、そのビルの中で働いている私を眺めるように感じとっている。

「痛いんです、右腹の疼きが……この疼き、なんとか取り除けませんか」
今夕また、そう言ってうずくまっている皺だらけの駱駝色のコートを着た男を、入り口で、滑車の着いた台に載せて ――このあたりで繰り返しに気づく、なつかしさもそのせいだったのかと―― それを押しながら小走りに駆けていき、高層階から海へ突き落としたのだった。

落ちていったのは、私だったような気もする。
なぜなら私は、スローモーションで落ちてゆきながら、ビルの外壁の何物にも代えがたい燦めきに顔全体を火照らせながら、まばゆくて目蓋も開けられずにいるうちに、まるで空間を裂くように海面を割って ――その瞬間、肩から上は一息で焔に包まれたように感じ―― 透明な水の中に没入していく、透きとおった明るい水色の揺らめきの中に没入していく感覚を、味わったように記憶しているから。 
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# by epea | 2001-01-29 19:12 | 未定稿

横たわり、鮮やかな五色の文字の印刷された紙を

横たわり、鮮やかな五色の文字の印刷された紙を右手で持ち上げて読んでいる。漢字か梵字。
その手は私のものではなかったかもしれない。肉体の右腕は、横たわった私の頭上に投げ出されたままだったから。

架空の右手は紙の右端を持ったまま下へ、その白い紙が胸から上腹のあたりを覆うような位置にまで下がってゆき、紙と腕とは溶け込むように私のなかへ入っていった。

その時、それがくる  と感じ、金属のうなりは耳の中に大きく鳴り響き、何者かへの思念が ――誤った相手に向かってはいけないと、咄嗟に四匹の龍を思い浮かべた―― 胸から突然あふれるように漂い出て、つい先ほどまで紙のあった宙空に数秒ほど渦を巻いていたが、それはぼんやりとした球体のままで、うまく投げかけることはできなかった。力が足りなかったから、それとも知らない存在だったから、おそらくその両方のため。

次に私の首を絞めていた男に向けて抛ってみようと思ったが、うまくいかなかった。体は整っていても顕在の呟きが強すぎたからだ。何とか成功させようとしているうちに、右脚も動いてしまった。

それでも、焦りはない。いつか見える(まみえる)とわかってきたのだ。
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# by epea | 2001-01-28 20:31 | 未定稿