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『2001年宇宙の旅』 DVD

比喩とはどういうものなのか? その役割について、最初の30分間で驚異的な力強さで語られている――台詞から徹底して離れたままで、しかも重層構造で。それがこの上なく鮮やかに感じられるのは、形状の類似によって結びつけられた三つの物が一見してかけ離れた存在でありながら、それらが別の面においてプラグマティックな均しさに貫かれていることを、映像の連なりのみによって、見る者に実感させているからではないか。

ここに、日常における「見えるもの」と「言葉によって語られるべきもの」との、驚くべき逆転がある。つまり本来であれば、映像という視覚情報によってあからさまに伝えられうるのは、形状の類似こそ、であるはずなのに。

あるいは、「見えるもの」と「見られるもの」との関係性。最終部分の展開は解釈の分かれるところだと思うが(普遍的に新しい作品は必ずそういう曖昧さを孕んでいる)、かくあるべきものとしてふだんの自意識が揺るぎなく決めつけている世界のありようや認識の仕方に対して、徹頭徹尾疑いを突きつけようという作り手の迫力を感じる。キューブリックの宇宙論。たとえば、「それ」は本当に一本の時間軸に従っているものなのか……? 個人的には、ものすごく疲れていたり悲しみにうちのめされて一人で道を歩いている時、ふいに前の方に悄然とした自分の後ろ姿を見る――そんな時、ああ今、自分の感覚はいつもと違う角度にずれているなとぼんやり感じとる、そういう時のズレの感覚に近いような気がする。

映像といい音楽といい、また両者によってもたらされる思索的な時間といい、DVDで鑑賞するにはあまりに惜しく、ぜひとも映画館で見るべき作品。というか、ワタシももう一度映画館で見たいヨ~!! まだ見ていない人は幸せだと思う、これほどの未知の感動がまだ人生の先にあるなんてね。
by epea | 2006-10-02 23:27
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